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ヨーセン1番地


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STORYWRITER(16)

Category: STORYWRITER(途中やめ)   Tags: ---
いろいろ思い出してきた。

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今朝からボクはずっと黙っていた。
いくら考えても答えが出ないことがある。
メリーがちゆりをさらった。
何のために?
わからない。
繰り返す。時間の浪費。
そもそも、それは真実なのか。
いや、やめよう。そこに対しては確信がある。
アリスはボクに誠意を尽くしてくれた。彼女は人付き合いが悪い。だが、嘘はつかない。
まるで先が見えない。この早朝の魔法の森と同じだ。霧が景色を隠してしまう。
「もう帰るの?」
アリスは家に隣接する倉庫を指差して、あと4人分の食料ならば1週間はあることを
伝えてくれた。
「材料はそろったと思う。あとは料理をするだけだね」
「生ゴミにならなければいいけど」
右手を引っ張られると、赤い紐を手首にぐるぐると巻きつけられた。
アリスが指を鳴らすと、紐はすうっと消えた。
「レシピを忘れたら紐を引っ張るといいわ」

自分の世界へ戻る境界は、アリスの家の目の前にあった。
今朝、メリーがそれを見つけて知らせてくれたのだ。
出口は行きと同様に帝国ホテルの中につながっていた。
「これからどうするんですか?」
メリーはボクに訊ねた。
ボクは紫さんが予約をした最終日までここに滞在することを告げた。
「そうすると何日泊まることになるのかな?」
「星が見えないから月日は分からないわよ」
蓮子が答える。
「えっと、10日ですね」
メリーはいつだって丁寧に回答をくれる。
「それなら10日間ずっとここで料理をする」
「料理?」
蓮子とメリーが声をそろえて言った。
「意味の無い比喩だよ」

それから、ボクは本屋に行って、一度読んだことがあるのに、内容が難しくて詳細を思い出せない
小説を10数冊ほど買った。時間をつぶすには丁度いい。
ホテルから出たのはそれが最後だった。
食事はルームサービスで済ませた。
ちゆりは死んでいない。利用価値があるから生かされている。
おそらくそれは紫さんに関連することだろう。ちゆりと接点を持つ人物はボクの知る限り彼女しか
いない。
メリーについて考える。
紫さんに似すぎている。
外見も。能力も。
ボクはインドの出来事を思い出している。
紫さんのクローン。
では、岡崎がボクとメリーをわざわざ引き合わせたのはなぜだ?
朝からビールを飲んだ。手にした本はカミュの異邦人。シラフで読んでも難解な小説だ。
酔っているくらいが丁度いい。
ボクは頭を空っぽにして、できる限り本に集中した。夜になると寝た。
それを毎日繰り返した。
9日目の夕方を迎える。すべての本を2回以上読破した。
進展は無い。
外では灰色の風が吹いている。
冷蔵庫が低いうなり声を上げている。
テレビはくだらない芸人が、くだらない話題で、下品な笑い声を上げている。
のどが渇いていた。
ボクは椅子から立ち上がって、冷蔵庫を開けた。ビールは入っていなかった。
追加注文のためにフロントに連絡を入れた。受話器を上げて、しかるべき番号を押す。
だが、呼び出し音が鳴らない。
再度ボタンを押す。
カチカチ、とプラスチック同士がこすれる音が部屋に響く。
ふと顔を上げると、テレビのディスプレイに何も映っていなかった。
リモコンのスイッチを押しても反応が無い。テレビは空虚な箱へと姿を変えていた。
一切の音が消えていた。
ライトの明かりが何度か激しく点滅した。
そのときになって窓には閉めたはずの無いカーテンが覆われていて、夕日を遮断
していることに気づいた。
ボクは本を机の上に置く。
入り口のドアを開く。
そこは闇だった。かつて遭遇したことのある闇。
どうやら料理の時間が始まったようだ。
さっそく準備に取り掛かる。用意する材料は二つ。高校時代に紫さんからもらったハエ
たたき、それからちゆりの広辞苑。
「さて、料理を始めようか」
ボクは部屋を出た。
扉は不吉な音を立てて閉まった。

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STORYWRITER(15)

Category: STORYWRITER(途中やめ)   Tags: ---
秘封倶楽部は通常の東方の舞台と時系列的に合わないというのがあるということを無視して、
強引にこの内容ではくっつけているので、そりゃあ全然違うよっていうのが進むごとに出てき
ますね。
……失敗したかな。

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ボクが蓮子とメリーを連れて野宿をしたというと、いつも感情をあらわにしないアリスから
注意を受けた。そのとき、アリスは殺虫剤をかけられて地面に落下する害虫を見るような
目つきでボクを見た。
そのアリスの表情をかつて一度だけ見たことがある。それはむかしアリスが持っていた
人形の腕を取ってしまったときだった。
アリスの家に着くと、家の主は蓮子とメリーの服を洗うために、二人を風呂へ案内した。
ボクはまさか二人が一緒に風呂に入るなんて思わなかったので、そういう趣味があるの
かと冷やかしたが、「性別が同じで愛し合っていたら不都合があるのかしら?」という大
胆な回答が蓮子から返ってきた。
「世界に羽ばたくべきだね」
風呂場に向かう二人にアドバイスをする。
「私たちは法律や制度に囚われないの」
蓮子は言った。
「まるで妖怪だ」
「それは私に対するあてつけかしら?」
アリスはティーカップを四つ用意し、そのうち二つに紅茶を入れた。
いつだってアリスはクールだ。そして、頭もいい。
「いい加減、私の家には誰かの案内で来てほしいんだけど」
「前に居留守を使われた」
「いつだってタイミングが悪いのよ。そういうところはアナタの先生のエリスにそっくり」
「紅茶が苦い」
「普段はお菓子を一緒に用意するんだけど、お昼のほうがいいでしょう?」
「すばらしい、ボクが妖怪ならアリスさんに求婚したね」
「ホント、何しにきたのよ?」
ボクはちゆりについて話す。それから紫さんのこと、岡崎のこと、そしてあの二人のことに
ついてボクが知る限りのすべてを伝えた。
アリスは目を閉じながら、紅茶をゆっくりと飲む。実に優雅だ。
「その子の手がかりみたいなものはあるの?」
ボクはホテルの枕についていたちゆりの毛髪をアリスに渡した。
「どうして私のところに来たの?」
それは圧迫からは程遠いところにあるような声色だったが、嘘をつけば許さないという
匂いがついていた。ボクは紫さんや、エリスさんのおかげで、妖怪との会話のコツを
身に着けつつあった。
「第一の条件は魔法使いであることだと考えてた。それから第二の条件は頭のキレる人」
アリスは空になったボクのカップに紅茶を注いでくれた。
「その条件でボクの知っている人物は三人しかいない」
魔理沙は秘密を共有するなんて性格ではない。パチュリーとは面識もほとんど無いし、
紅魔館のような妖怪の根城に飛び込む勇気も無い。
「消去法ということかしら?」
「そうじゃなくて……」
弁解をしようとしたとき、風呂場から蓮子の叫び声が聞こえた。
「ヨヨヨヨヨヨヨヨヨーセンさん!人形が、人形が!」
蓮子がサバンナを走るヌーの群れような音を立てて、部屋まで駆け込んできた。
「人形がしゃべって動いてタオルと服をくれた!」
「ここは未来博物館だからね」
「ハイテクなのね!」

それから、ボクたちはアリスが用意してくれた遅めの昼食を摂った。
蓮子とメリーは人形たちがアリスの魔力で動いていることを知ると、夜店のくじで一等を
当てた小学生のように跳ね回った。
それから、アリスを質問攻めにした。
アリスさんはどこで生まれたんですか。
魔法ってどうやったら使えるんですか。
人形を一体だけでいいのでくれませんか。
珍しいのは、その質問に対してアリスがきちんと返答をしたことだ。普段ならば、「ごめんな
さいね、私も分からないのよ」と適当に流すだけなのに。

夜になった。
半日動き回っていたせいなのか、蓮子とメリーは夕飯を摂ると目をこすり始めた。
二人が寝室に入ると、アリスがちゆりについて口を開いた。
「居場所が分からないわ」
アリスはきっぱりと答えた。
「その回答は予想していなかった」
「分からないって言ったのは、私の知らない場所にいるっていうことなんだけどね」
「哲学は単位を落としかけるくらい苦手なんだよね」
「まったくもう」
アリスは机の上に、幻想郷と魔界とボクの住む世界の地図を広げた。
「私は知っている世界はこの3つなの」
「世界はあまりにも広い」
「そのちゆりって子がいないか、それぞれ調べたわ。でも、どこにも見当たらない」
「ちゆりはボクたちの知らない場所にいる」
「そして、まだ生きている」
「なるほど」
「あとはアナタが捜しなさい。消去法は得意でしょ」
アリスはもう寝るわと言って、席を立とうとした。
「ボクはテストで困ったときに消去法なんか使わない」
「サイコロでも転がすのかしら?」
「友達に答えを聞く」
アリスは振り向いて、ボクの顔をじっと眺めた。
「ひとつ条件を出していいかしら?」
「借金以外ならなんでもするよ」
「私のことを”さん”付けで呼ぶのをやめてもらえないかしら?」
アリスは部屋から出るために扉に手をかけた。
ちゆりは生きている。それは朗報だったが、結局のところ進展は無かった。
暗いトンネルを進んでいて、いつの間にか前進しているのか後退しているのか分からなく
なった気分だ。喉をやけどするくらいタバコを吸いたくなった。
「そうそう、言い忘れていたけど」
アリスが扉を閉める直前に言った。
「あの金髪の子よ」
「アリスも金髪だろう」
「あの子がさらったのよ」
「さらう……?」
「あとはアナタが調べなさい」
おやすみ、アリスは最後にそう言った。
扉がやけに大きな音を立てて閉まった。

STORYWRITER(14)

Category: STORYWRITER(途中やめ)   Tags: ---
こんにちは、八雲紫です!
少し時間ができたのでコツコツとブログを更新しちゃったりしていますが、文章については
ものすごい久しぶりに書いたものだから、今回と前回の内容はひとつにまとめられたんじゃ
ないかと今更後悔よ!
バカね!

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「休憩!本日2回目の休憩に入りたいと思います!」
蓮子は両手をひざに乗せ、肩で息をして、もう動けないことをアピールする。一体、いつに
なったら目的地に着くのよ!蓮子の不満は爆発寸前だった。
「私たちはいつまで歩けばいいんでしょうね!」
「あんまりカリカリしないほうがいいわよ。えっと、ほら、遠足だって思えばいいのよ」
「メリーはポジティブすぎる!」
私はオカルトな体験をしたいの!ほら、見てよ、太陽がこんなに上まで昇ってる!朝から
歩きっぱなしなのよ!
そりゃあ、薪を集めたり、野宿したり、何時間も歩いたりなんて初めての体験よ。貴重って
言われれば貴重だと思うわ。否定しないわよ。こんなことをやっている大学の同級生なんて
数えるほどしかいないでしょうね。
でも、私はワンダーフォーゲル部でもないし、野鳥鑑賞会でもないし、レスキュー隊でも
ないの!
「メリー、私たちのサークルの名前は!?」
「ひ、秘封倶楽部。霊能を取り扱うサークルです」
「でも、いまのところ霊能の要素はゼロッパーセントでございます!」
蓮子は天に向かって諸手を挙げる。
すばらしいアピールだ。蓮子は政治家に向いているような気がする。
「ヨーセンさん!」
「はい」
「このままだと私たちの足は野生を取り戻してしまうわ!」
「縄文時代は神秘主義のような気がする」
「文明のある生活がしたいのよー!」
蓮子はメリーの胸に飛び込んだ。
「このオジサンは何も考えていないよー」
どうやら泣いているようだ、うそ泣きだとは思うけど。
メリーが蓮子の頭をなでる。
「仲良きことは美しきかな」
「でも、本当にいつ目的地につくんですか?」
メリーも不安そうだ。このまま黙っているのも忍びないので、正確に回答をしようと思う。
「わからない」
「えっ?」
「普通の人間が迷いの森に入ったら、二度と出てこれない」
「どういうことよー!」
蓮子が跳ね起きた。
「もうこんなのに付き合っていられないわ!メリー、帰ろう!」
「岡崎教授の言いつけをやぶるの?」
「うぬぬ、あの人はバカだから気をつけてって言われたけど、まさかここまでとは……」
岡崎は生徒にそんなこと言っているのか。ヒドイ。
「それに帰り道の境界だけど、ここには無いわよ」
「オーマイガーッ!」
「どうやって魔法使いに会いに行くのでしょうか?」
「ぼちぼち迎えが来ると思うんだ」
ボクは蓮子にいま何時であるかを尋ねる。
「知らないわよ!星が見えないと時間は分からないの!」
「ボクの携帯電話の充電も切れた」
「ええと、午後12時前です」
メリーが答える。
森に入って半日が過ぎた。ふむ、これだけグルグルと森を回っていれば、普通に考えて
ボクたちが迷子になったと認識するだろう。
「迎えにって、誰かと約束をしているんですか?」
「まさか死神が来るとか笑えないジョークじゃないわよね……!?」
「幻想郷の死神は怠け者だから殺されないよ」
「死神なの!?」
「ちがう」
「それじゃ、いったいなんなのよ!?」
「だから魔法使いだって」
「もしかして、私かしら?」
そして、背後から女性の声が聞こえた。すばらしいタイミングだ。
ボクは振り返って、声の主であるセミロングの金髪の女性に向かって返事をする。
「面倒くさいことに巻き込まないでよね」
その女性、アリス・マーガトロイドは面倒くさそうに答えた。

STORYWRITER(13)

Category: STORYWRITER(途中やめ)   Tags: ---
境界を抜けると、真っ黒な闇が周りを包んでいた。
本能が危険を察知しているのか心臓の奥にある繊細な部分が動く。その強引な鼓動からくる鈍い痛み
で、ボクはまぶたを大きく開いた。
すべてが一変した。
上空から鳥の鳴き声が聞こえる。さえずりではない。死肉をついばむカラスの雄叫びようなくぐもった
不吉な音色を含んでいる。

ボクたちは森の中にいた。
自動販売機ほどの太さをもつ樹木が稲妻のように無造作に並んでいた。
光合成をするためには天に向かって長く伸びる必要があるようで、葉が空をふさぐようにして成長して
いた。枝は地面に近いところところには、ほとんど生えていない。

ひゅうと風が吹く。耳がちぎれるほど冷たい風だった。
ボクはダウンジャケットのボタンを一番上まできっちりと合わせる。
「寒いね、とても」
ボクは蓮子とメリーに同意を求めた。しかし、二人は答えない。能面のように白い表情を浮かべて
いるだけだ。
蓮子、そして、メリーも、ここが現代の日本には無い漠然とした不穏な空気を発していることに気付く
程度の感性の鋭さを持っているようだ。
なるほどオカルトサークルを開くだけのことはある。

「まあ、不安になるのも分かる」
ボクの言葉に蓮子はムッとしたようで、そんなんじゃないわよと唇をへの字に吊り上げる。
「それで、ここは幻想郷の何丁目かしら?」
蓮子が両肩をすくめてみせた。しかし、その動きは油の切れた自転車のチェーンのようにぎこちなく
不自然であった。
「残念ながら、携帯電話にGPS機能が搭載されていない」
ボクは蓮子の質問にきちんと回答した。
「いまどき子ども向けの携帯にだって付いているわよ」
「でも時間はわかる。午後7時10分」
「正確には午後7時13分8秒」
「いい時計を持っているみたいだね」
「少しでも星が見えば分かるの」
「ロマンチックだ」
「信じるの?」
「わりと」
「ぜったい他人にだまされるタイプね、ヨーセンさんって」
「騙すよりもよっぽどいいよ」
「ついてもいい嘘だってあると思うのよ」
「たとえばここは安全な場所って言えばいいのかな?」
「あなたってバカでしょ?」
「安心させようとしたんだけどね」
「メリーからも何か言ってあげたほうがいいわよ」
突然話題を振られたメリーは慌てたのか少しだけ口ごもると、
「ここが幻想郷なのでしょうか?」
と、上目遣いで訊いてきた。瞳には好奇心と恐怖心が織り交ざっていた。その姿はまるで母親の
背中越しから外界を初めて眺める小動物を髣髴とさせ、蓮子よりも頭半分ほど身長が大きいメ
リーが不思議と誰よりも小さく見えた。
「間違いないね、断言する」
なぜなら妖怪の気配を感じたからだ。ただし、そのことは黙っていた。
二人が妖怪に会いたいというアクションをされたら面倒くさいからだ。妖怪が人間に友好的だとは
限らない。

ここがどこであるかも見当が付いた。
ここまで木々が密集して生えている場所は、幻想郷では二つしかない。
1つ目は妖怪の山。しかし、ここは山ほどの斜面がない。なにより妖怪の気配を感じない。
そうすると2つ目、魔法の森だ。

ボクは出発を促す。
二人はどこに行くのという顔をする。
「魔法使いに会いに行く」
ボクは答えた。

STORYWRITER(12)

Category: STORYWRITER(途中やめ)   Tags: ---
もう何も怖くない

           ○
            く|7
         ┌'弋
           ,亅  |
       // \|
      //    \    へ
     //.        \ ///
    くx  ◎       // \
      \      // /  .\
       \   // /  /  \
        ヽ// /  /  /  \


ちょっと文体を変えてみることにします。
目標は出来る限り丁寧に。

ξ( >◡)ξ▄▇▇〓〓ティロ・フィナーレ!

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「お前は海外まで行って、いったい何をしたいんだ」

父さんはたぶん、単純な疑問を口にしたのだと思う。
ボクがケンブリッジ大学に行きたいと告げたとき、父さんは自宅の応接
間で正座の姿勢で腕組みをしていた。
珍しい光景だった。
こんなとっぷりと日も暮れた時間帯の父さんの過ごし方といったら、
横になりながら文庫本かテレビを見ているというのが常だった。だけど、
今日はそんな緩やかな雰囲気の面影は感じられなかった。

部屋にはボクと父さんの他に保険医のエリス先生もいた。
エリス先生も父さんと同じように座布団の上で正座をしていた。
ボクとエリス先生が並んで座り、テーブルの向かい側に父さんがいた。
網戸からは夏の名残を感じる生ぬるい風が入り込んできた。
父さんは微動だにしない。

「彼にはそれだけのポテンシャルを秘めているのです」

エリス先生もまた、父さんのように視線に一切の揺らぎを見せなかった。

「どうして断言できるんだい?」

父さんは右手の人差し指と中指で、テーブルを二回、三回とリズミカルに
叩いた。その音にはわずかな苛立ちが含まれているように思えた。

「私の母校だからです」

「なるほど」

と、父さんは返事をしたが、

「よく分かったが、俺が聞きたいことは、そんなことじゃアねえな」

父さんはボクを見て、もう一度質問をした。お前は何がしたいんだ?
ボクは返答に窮した。
よく考えてみたら、生まれた18年間の人生で、ボクが自分の意志で決めたこと
なんてほとんどなかった。
当然、即答することなんて地球の自転を逆回転させるくらい不可能なことだった。

その日から、ボクは大学へ行く理由を真剣に考えた。
今までの人生の中で最も悩んだ。
夜中まで悩み、朝は起きれずに学校を休んで、何もしないなら家事をやれ
と父さんに言われ、洗剤を入れないまま洗濯機を回したり、だしを取らずに
味噌汁を作ったり、風呂に水を張ったりを1週間ほど繰り返した。

父さんから100万円の預金通帳を渡されたのは、それからしばらくして
だった。

「まあ、あれだ、俺も東大を記念受験したことがあるから、お前のことを
 強く否定できないことに気付いたわけだ」

ボクは父さんの発言の意図を掴めずに、意外とウチも貯金があったんだねと
伝えると、イギリスまでの駄賃だ、と頭を小突かれた。

「まあ、自分のやりたいことは自分で考えるしかないからな」

色々経験して、自分なりの回答を出すといいさ。父さんはそう言って笑った。
結局、ボクは大学に、それも海外の大学になぜ行きたいのかという答えを出せ
ないまま入学することとなってしまった。

あのときから随分経つけれど、ボクは自分で何かを決めたことなんてあったの
だろうか。
いつだって重要なことは先送りする。
この悪癖は治っていない、むしろ酷くなっている気がする。

「どうして、その、ちゆりさんという子を保護しているんですか?」

そんなことを考えていたとき、メリーはボクに質問を投げてきた。

ボクは幻想郷へ通じる境界の中を歩いていた。
メリーの案内で、帝国ホテルのベッドから幻想郷の境界を発見できた。
境界をくぐると、世界は霧のような薄ぼんやりとした光に包まれ、ほんの
数メートル先はまるで何も見えなかった。

部屋と比べるといくぶん寒いはずなのに、歩くたびに汗が出た。
おそらく湿度が高いせいだと思う。
ただ歩いているだけなのに息苦しく、歩くたびに地面からペタ
ペタと感情を逆なでするような音が聞こえてきた。まるで水浸
しの床を進んでいるかのようだった。

ボクはもう、何かを考えることを放棄していた。
そして、放棄という行為そのものが、無意識にその悪癖に気付く
こととなった過去へボクをいざなったのだ。

そんなときにメリーにちゆりのことを訊かれ、ボクは内臓を口から
無理矢理引きずり出されたような気分を味わった。

なぜボクはちゆりを保護するのか?

非常にシンプルな疑問だと思う。
ボクとちゆりはまだ2日しか一緒に過ごしていない。
まともなコミュニケーションが取れない。
おまけに保護を依頼した人物から、彼女の経歴について
一切教えてもらっていない。

どこをどう取っても、ボクが保護する理由を、義理を
感じられる土台が無い。
仮に同じ立場の人が身近にいたら、ボクだって同じ疑問を
持つと思う。

「さあ、なぜだろう……?」

質問を質問で返すと、メリーは口元を手で押さえて控えめに笑った。

「秘密というわけですね」

メリーが言う。

「神秘性は人を惹きつけてやまない」

「オカルトサークルは惹きつけられました」

「幻想郷では妖怪さえも引き寄せる」

「飛んで火にいる夏の虫」

蓮子が口の端を大きく広げて、会話に加わる。

「できれば虫にはなりたくないもんだね」

ボクは肩をすくめた。

さて……、幻想郷の入口はもうすぐだ。
そこでボクはちゆりを捜す手段を見つける。
そして、もう一つの答えも見つけなければならない。
ボクがなぜ、ちゆりを護ろうとしているのか。その答えを。

プロフィール

ヨーセン

Author:ヨーセン
ただ、ダラダラと。
鰻は世界一美味い食べ物だよね?

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あっとを@に変更してください。

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